私だけの森

移り住んだ家には私だけの森があった。            

19年近くも住んだ家をあとに、新しい家に移るのは
勇気のいる事だった。
別に越さなければならない理由があったわけでもない。
親しい隣人たちからも遠くなる。
よく自転車で通ったあの森からも遠くなる。

冬の寒いある日、遂に新しい家に引っ越した。
最初の朝、寝室の丸窓からのぞくと、そこには
私だけの小さな森があった。
一面真っ白な雪景色なのに、そこだけ樹々に
守られて雪がなかった。
そしてそこに朝日が差し、なんとも
美しい絵を私に見せてくれた。               

私だけの、秘密の森、
引っ越して来て良かったと思った最初の瞬間だった。

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