九月の森

黄金の秋という表現がこの国にはある。
そんなある日、私は森へと急いだ。
何故いつもこんなに急ぐのだろう。
何故いつもこんなに心がおどるのだろう。
今日は何に会えるかな、今日の森はどんな顔を見せてくれるかな、と思うと
坂道なのにひとりでに自転車をこぐ足に力が入る。

トウモロコシ畑を越えると森の入り口、
何故こんなにわくわくするのだろう。
何故こんなにどきどきするのだろう。
鹿がいるかな、野うさぎに行き会えるかな、りすはどうしているかな?

太陽の国の森ならまだせみの声が降るように聞こえるこの時期に、
この国の森の中はシーンとしずまりかえっている。
春には、あんなに競いあって、歌っていた鳥たちも、
今ではもう雄が雌をよぶ事も、子育てのために雄を追い出し
縄張りを主張する必要もなくなり、静寂そのもの。

時々聞こえる、さわさわという葉ずれの音。やわらかい木漏れ日。
足元にはシダが生い茂り、まだ青いどんぐりの実がいくつか落ちている。

結局今日は、何にも行き会えなかった。
乗馬する人、犬の散歩をする人意外は。

帰り道にいつものようにのんびりと草を食む牛、馬やポニーたち、
すずなりに実をつけたりんごの木が、太陽の光を思う存分に浴びて輝いていた。

秋とはいってもまだ八時頃まで明るい。
夕方の陽ざしは、やわらかいけれど生き生きとしている。
そんな空に気球がひとつ浮かんでいた。

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